授業内容の補足・推薦図書の追加・言語学よもやま話など


by jjhhori

裏話5:著者(4)「言語学概論」

「言語学概論」といえば,みなさんの多くにとっては,水曜日の4コマ目,ちょうどお昼寝にはもってこいの時間帯に繰り広げられる,最も忌むべき(?)授業の1つでしょう.しかも,それが必修科目の1つに指定されているわけですから,みなさんの心情は察するに余りあります.そのような授業を心から楽しいと思い,水曜日は朝から気分がウキウキだなどといえば,変人の謗りは免れないことと思いますが(笑),私が学生の時に受けた言語学概論は,毎回面白くて仕方ないという内容で,その意味で,私は幸せだったと思います(もっと幸せなことに,必修科目ではなかった.笑).更にいえば,著者による言語学概論を受けなかったら,今日の私はなかったと思います.

さて,著者による「言語学概論」は,水曜日のお昼寝時などではなく,なんと月曜日の朝1コマ目.にも拘わらず,人大講規模の教室がほぼ満杯になるという具合で,名物授業の1つだったといえます.

1コマ目の開始時刻は8時半という高校並みの早さでしたが,先生がご登場になるのは大体8時50分頃.先生は,朝のラッシュに巻き込まれるのがお嫌で,授業開始の1時間前には大学にいらしていたそうですが,学生が大体揃う時間帯を見計らってご登場になっていたようです.

先生の授業の特徴をあげるとすれば,まず第一に,マイクなし.先生はマイクがお嫌いで,それだけの大きな教室であったにも拘わらず,マイクはほとんどお使いになりませんでした.しかし,とてもよく通るお声でしたので,後ろの方まではっきりと聞こえていたようです.私は学生の時にはあまり感じなかったのですが,先生の退官記念に行なわれた最終講義のテープをたまたま聞いてみたら,かなりの早口だったことに気付きました.しかし,お声がお歳の割に若々しく,しかも発音がとても明瞭でしたので,あまりいい状態の録音ではありませんでしたが,内容が十分理解できるほど,歯切れのいい日本語でした.

第二の特徴は,ノートや資料一切なし.いつも手ぶらで教室に入ってこられ,前に座っている学生に前回の内容を確認してから,お話になるのが常でした.おそらく長年のご経験からそのようなスタイルになったのでしょうが,澱みなく,滔々とお話しになるのは,まるで講談か何かを聞いているようなほど,見事なものでした.勿論,同じことの繰り返しというのもありましたが(笑).ちなみに,私などは,手ぶらで教室に入っていくという勇気はとてもなく,ノートがないと,話があちこちにいったり,大事なことを言い落としてしまったりという不安があります.先生の域に達するのはまず無理だと思いますが,ノートとプリントをしっかり用意するというこのスタイルは,大学院の時の指導教官の影響でしょうね.

こうして約1時間ばかりお話しになった後,終了の大体10分前に「じゃ生きてたら,また来週」という,冗談だか本気だか分からないお言葉を残して,教室を後にされるのでした.

授業の内容は,その大学が外国語に重点を置いていたこともあって,それぞれの学生が外国語を習得する上でヒントとなるようなものを心がけていたと,先生ご自身おっしゃっていました.改めて,学生時代のノートをみてみると,今使っているテキストと内容がかなり重なっているように感じます(順番は違いますが).ただ,テキストの方は,ある程度の字数制限があったために,具体例や多少の説明が省かれているところがあるように感じます.授業を聞いていれば,「あぁ,あのことか」とすぐピンとくるのですが,そうでなければ,理解するのに少し時間がかかるところもあるでしょう.

学生時代に先生の授業を受けて,「言語学って面白いんだなぁ」と自分が感じたように,みなさんがそう感じる授業をしてみたいという気持ちは十分あるんですが,なかなか思い通りにいかないものです.難しいことをやさしく説くというのは,それだけ自分が十分理解していなくてはならないわけで,難しいことを難しくしゃべっているのは,要するにその本人が全然分かっていないということです.人にちゃんと説明できるかどうかによって自分がどの程度理解しているかが分かるとすれば,私は,まだまだだなぁと,言語学概論が終わった後,いつも自己嫌悪に陥っています(苦笑).

最後に,先生の授業から名言集を少々:

言語外現実に対応する人名の例:
  「いのうえ しんぞう」(分かりますか?)
ある日の授業の第一声:
  「ですから」(私は身もだえして笑いました)
休講のアナウンスの仕方:
  「来週は風邪を引きますので,休講にします」(私も時々使っています)

では,生きてたら,今度の火曜日に.
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by jjhhori | 2004-06-11 14:22 | 裏話