授業内容の補足・推薦図書の追加・言語学よもやま話など


by jjhhori

裏話6:著者(5)「外国語上達法」

著者には,『外国語上達法』(岩波新書,1986年)という著書があります.みなさんの中にも読んだことがある人もいるでしょう.「必要なのはお金と時間」というのをみて,「なーんだ」と思った人もあるでしょうし,一方で「まず,これとこれはおさえておけ」とか「基本語彙のこれだけは覚えろ」といった具体的な話を読んで「よしやってみよう」という気になった人もいるでしょう.また,語学の教師に求められる条件についても1章が割かれていますので,特に英語や日本語の教師をめざす人には,是非とも読んでほしいと思います.

本書の冒頭に「私は語学が苦手である」とありますが,これは相当割り引いて受け止めるべきです.苦手どころか,語学の才能が相当おありだったことは,手がけられた言語の多さからあきらかであり,その本がかなりの説得力をもっているのも,語学が相当おできになったからです.

言語学をやっている人をみると,本当に語学の才能に恵まれた人と,語学の才能はおろか,使える言語は自分の母語だけという人の2つに分けることができると思います.そして,後者に属する人は,自分は言語学をやっていながら,語学ができないことを自慢げに(?)話すという共通の特徴があります(勿論,私は後者です.笑.いや,笑っている場合ではない).

たとえば,私の知人で,中国の内蒙古出身の人がいるのですが,その人は,モンゴル語は勿論,中国語もでき,しかも大学では日本語を専攻していたので,日本語も完璧.更に,来日してから英語を勉強して,1年かそこらで,ブルームフィールドの『言語』を原書で読み始めたかと思ったら,ロシア語を使ってシベリアの言語を調査し,その言語も習得してしまっているという,私から見たら神業のようなことを平気でやってのけています.

あるいは,ある国際シンポジウムで,ある高名なアメリカの言語学者が発表を英語で行ない,質疑応答の時に,日本人には日本語で,フランス語を話すアフリカの人にはフランス語で,更に,中国人には中国語で応じているのをみて,これまた驚いたことがあります.世の中には語学の才に恵まれた人がいるものです(ため息).

『外国語上達法』に話を戻しますと,この本の特徴は,言語学からみた外国語の上達法である点です.もっといえば,ここに書かれている外国語上達法は,言語調査の手法にも通ずるものがあり,フィールドワークを志す人にも某かの学ぶべき点があるといえます(著者がそこまで意図していたかどうかは分かりませんが).また,テキストの中で出てきたFSP理論などについても言及がありますので,そういう点でも読んでみる価値があるといえるでしょう.

尚,その本の中に,R先生とかS先生とか,イニシャルでお名前が書かれた方が登場しますが,これは姓ではなく,名の方のイニシャルです(但し,そうでない方もいらっしゃいます).そうなると,「東京の西の郊外に住むEさん」というのは,どなたのことか分かりますね.

どの程度までできればその外国語をものにしたといえるのかは人によって違いますが,まずは,目的をもつことが大事です.その目的が達成し得た時点で,とりあえずものにしたといえると思います.ただ漫然とやっていても,外国語は上達しない,それから,一度挫折した外国語は何度やっても挫折するというのは,私の経験からいえる外国語停滞的スパイラルの法則です(笑).
[PR]
by jjhhori | 2004-07-06 17:46 | 裏話